抗生物質は、感染症を起こす細菌を壊したり増殖を抑えたりする薬です。
でも、不適切な使い方を続けていると、菌に耐性ができて薬が効かなくなることも。
これは「AMR(薬剤耐性)」と呼ばれ、世界で大きな問題になっています。
将来、自分や家族が危険な感染症にかかったとき、もし抗生物質が効かなかったら……。
その対策や予防について、丸石製薬の感染対策コンシェルジュがAMR問題に詳しい大曲貴夫先生に聞きました。

自分と家族の健康のために正しい知識を

中村
一般市民もAMR対策が急務だと思いますが、現実的にはかぜで病院へ行ったときに抗生物質をもらえなかったら、「早く治りたいのになぜくれないのか」と思ってしまいそうです。
大曲
かぜの治癒の程度については、抗生物質を飲んだ人と飲まない人の間に差はないという調査結果が出ています。ですから、自己判断で手持ちの抗生物質を飲んだり、医師に「抗生物質は不要」と言われたのに要求したりといったことはしないでください。それは、ご自身やご家族の健康にとってよくないことなのです。「大きな病気になったときに、もし薬が効かなかったら」と考えてみてください。日本ではまだAMRへの理解が進んでいないので、もっと積極的に発信していかなければと思っています。
中村
一般市民の立場から言うと、私たちはAMR対策と同時に感染症の予防法も知っておく必要がありますね。
大曲
その通りです。手洗いや咳エチケットのほか、マスクの有効性も科学的に実証されていますので、ぜひ心がけてください。また、ご自身やお子さんの体調管理法や、どんなときに病院へ行くべきなのかといったことも知っておきたいですね。感染症などの身近な病気との付き合い方について、正しい知識を身につけておきましょう。

家族・地域ぐるみでの取り組みを目指して

八木
抗生物質の適正使用については、国も「AMR対策アクションプラン」を策定するなど取り組みを進めていますね。ただ、抗生物質の使用を減らしていくとなると、本当に必要な患者さんにももらえなくなるのではと心配しています。
大曲
医師にも、そうした患者さんを見極める技量が求められますね。耐性を持った菌は増やさないようにしなければなりませんが、一番大切なのは患者さんが助かること。抗生物質が不要な場合にも、患者さんの不安を納得に変えられるよう、じっくり話し合うことが重要です。
後藤
そのためには、AMR問題への理解を求めていくことも大事ですね。先生がセンター長を務められている「AMR臨床リファレンスセンター」の取り組みを教えてください。
大曲
「AMR対策アクションプラン」に基づいて、感染症の動向に関する調査・監視活動、国民や医療者への情報発信、AMRに関する指導者の育成などに取り組んでいます。特に情報発信では、今後はお母さん方や学校、保育所のほか、薬剤師や保健師など、地域で活動する人たちにも届くようにしていきたいと考えています。
和田
在宅医療や福祉施設などに関わる人たちにも、AMR問題を知ってほしいと願っています。「抗生物質は感染症の万能薬ではない」と理解したうえで、子どもたちの未来のために、薬と上手に付き合っていただきたいですね。
大曲
同感です。ご自身や家族のためにも、ぜひ関心を持ってほしいですね。そして今後は、医師も福祉領域の人たちと手を取り合っていかなければ。AMR問題に対して家族ぐるみ、地域ぐるみで取り組んでもらえるよう、しっかり活動していきたいと思います。

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感染症に使える薬がなくなる「AMR問題」

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