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特定非営利活動法人 日本肺癌学会
※所属・役職は2022年12月1日当時のもの
日本肺癌学会は、新型コロナウイルスの第2波が終息した2020年10月、コロナによる肺がん治療への影響を調査しました。検診控えにより診断数が減り、推計で約8600人の肺がんが見逃され、診断と治療の機会を逸した結果になりました。私自身も「進行がんが増えた」と実感しています。がん治療中の方は体力が低下し、コロナに感染しやすい状況です。感染しますと重症化し、死亡率が高くなります。がん治療が中断すると、がんが進行します。基本的なコロナ感染防止を行い、がん検診を通常通り受けることが大切です。肺がんと診断されれば、適切な治療を迅速に受け、治療1〜2週間前にはワクチンを接種しておくことを心がけて下さい。
がんは遺伝子の病気です。遺伝子異常が蓄積して起こり、がん細胞が増殖し、転移して増えます。一番多いのは、気道から奥にできる腺がん。たばこに関係するのは気道の近くの扁平上皮がんと小細胞がん。ほかに大細胞がんがあります。胸痛や血痰の症状が出たらX線やCTで検査を行い、がんが見つかれば病理や遺伝子の検査でがんのタイプを診断。治療は手術と放射線・化学療法、薬物療法です。ロボット手術や放射線療法は精密に行えるようになり、薬物療法は分子標的薬と免疫チェックポイント阻害薬により進歩し、生存率は今後向上します。AIを使ってデータベースを作り、データに基づいた治療の提案を目指します。
肺がん手術は、片方の肺を全部取る全摘と部分的に取る肺葉・区域・部分の切除に分けられます。範囲が大きいほど肺機能が落ち、小さいほど再発の可能性が残ります。高解像度CTが進歩して切除範囲は小さくなり、胸腔鏡やロボット技術が手術の正確性や安全性を高めています。世界の患者さんから多くのデータを集め、統計学的に治療を決めます。ステージ1〜2の方は外科医が切除しますが、3は手術や放射線と化学療法を組み合わせます。4は化学療法ですが、4でも検査(生検)の切除を行うことがあります。化学療法が急速に進行して、内科や放射線、生検の先生方と我々外科医が話し合いを重ね、より精度の高い治療計画を立てるのが責務です。
放射線は、がん細胞の二重らせん構造を分断して、分裂できないようにします。根治から再発予防、緩和まで幅広く利用され、薬物療法や手術と組み合わせて行われています。身体への負担が少なく通院が可能です。照射範囲が広く線量が高いほど副作用が出やすいです。主にX線やγ(ガンマ)線などの光子線が使われ、複数方向から照射する3次元原体照射(3D-CRT)が主流でしたが、線量の集中力を高めたり、狙った所に正確に照射したりする新技術も登場しています。新たに粒子線も普及しています。重粒子線と陽子線があり、ピンポイント性に優れています。がん治療は各分野とも進歩し多様化しており、医師の話をよく聞いて治療法を選択してください。
二人の患者さんが自らの闘病生活の体験談をもとに
医師および看護師と意見交換を行いました。
肺がん治療中のAさんが治療体験を発表。医療者側は最適な量・質・タイミングでの情報提供と言葉の厳選を、患者側は察したり我慢したりせずに自身の状態を伝え、納得するまで確認することを訴えました。続いて、清水秀文医師(JCHO東京新宿メディカルセンター)とがん化学療法看護認定看護師の藤原美香さん(大分大学病院)、患者Bさんも交えパネルディスカッションを行いました。
早く気づけなかったのでしょうか?どう訴えれば良かったのでしょうか?
主治医との付き合いが手術からなので難しかったと思います。医師は外来で診療を始めると他の先生を参考にする機会もなく、コミュニケーションスキルが上がりません。学ぶ場をどう設けていくかが課題。患者さんも知識を正しく身につけていただきたい。
外来患者さんは情報を取りに行くことも大切だと思いますし、困っていることがあったら勇気を出して声をかけてください。