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主治医とともに歩む
糖尿病治療
知っておきたい“MY目標値”

患者のイラスト

2023月8月5日
Sponsored by 日本イーライリリー株式会社、田辺三菱製薬株式会社

医師のイラスト
糖尿病は、主治医と目標を共にし、二人三脚で治療に取り組むことが大切です。
6月4日、専門家を招き、血糖・体重の管理や主治医と円滑にコミュニケーションをとるコツなど、
糖尿病治療の理解を深めるためのオンライン市民講座が開催されました。

[主催] 日本イーライリリー株式会社、田辺三菱製薬株式会社 [共催] 読売新聞社 [協力] ヨミドクター

PROGRAM
講演1
糖尿病治療のための
医療行動経済学
平井 啓 先生
大阪大学大学院 人間科学研究科 准教授
講演2
知っていますか、あなたの治療目標値
─ 血糖と体重の管理
鈴木 亮 先生
東京医科大学病院
糖尿病・代謝・内分泌内科 主任教授
トークセッション
糖尿病治療、
主治医とともに歩むために
講演1

糖尿病治療のための
医療行動経済学

平井 啓 先生/大阪大学大学院 人間科学研究科 准教授
医療者と患者さんは
見えている景色が違います
平井 啓 先生
大阪大学大学院 人間科学研究科 准教授

医療行動経済学専門家の立場から、医療者と患者さんとの間で起きるコミュニケーションのすれ違いについて、またそうしたすれ違いが起きるメカニズムについてお話したいと思います。

すれ違いは、患者さんと医療者とで見えている景色が異なるために起こります。患者さんは、いわば初めて訪れた森で、その先や周囲がどうなっているのかが分からないままに立っている状態です。一方、日常的に糖尿病のある人を診ている医療者は、森を熟知していて、全体像を把握しています。そこで、医療者はあちらの先には崖がある、だからこちらの道を進みましょうといった具合に適切な治療法を提案し、患者さんに行動変容を促します。ですが、たとえ合理的で正しい説明であっても、患者さんのほうはなかなか合理的に判断するのが難しいこともあります。というのも、人の意思決定には様々なバイアスが影響するからです。人には、損失を回避しようとしたり、目の前のものの価値を高く見積もり、遠くにあるものの価値を低く見積もったりする心理的傾向があります。つまり、糖尿病のような自覚症状のあまりない慢性疾患の場合、将来における合併症のリスク(=損失)を理解していても、患者さんは、通院や食事制限といった治療による現在の負担(=損失)を避けたいと思うのは自然なことなのです。

治療の意思決定における医療者と患者さんのすれ違いは、このような認知の違いや様々な心理的バイアスが要因となって起こると考えられています。

医療行動経済学とは
経済学と心理学を融合させ、人間の非合理な経済活動を分析する行動経済学の手法をもとに、医療現場におけるすれ違いの背景を考察する学問。医療者、患者ともに合理的な存在であることを前提とせず、様々なバイアスの影響を考慮することが重要だという。
医療行動経済学コラムのイラスト
講演2

知っていますか、
あなたの治療目標値
─ 血糖と体重の管理

鈴木 亮 先生/東京医科大学病院  糖尿病・代謝・内分泌内科  主任教授
希望するゴールからの
目標値設定が大切です
鈴木 亮 先生
東京医科大学病院 糖尿病・代謝・内分泌内科主任教授

糖尿病は自覚症状に乏しい病気です。しかし、のちに網膜症や神経障害、腎機能低下、心筋梗塞、脳梗塞といった合併症を発症するリスクが高いため、血糖や体重を含めた包括的な管理が重要になります。

血糖値は食後と空腹時とで大きく変動するので、私たちは赤血球中のヘモグロビンに結合した糖の量を測るHbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)という直近1〜2か月の平均的な血糖状態を見ることができる数値を指標にします。合併症予防の目標値は、HbA1c値7.0%未満です。しかし、若い方や糖尿病と診断されて間もない方は、目標値をもう少し厳しく設定したほうが、その後のメリットは大きいと考えられます。反対に、低血糖に陥るリスクも考慮しなくてはいけない高齢者などには、目標値を緩和することがあります。

体重の管理は、体重と身長から算出される肥満度を表す体格指数であるBMIの数値を指標とします。「目標体重」の考え方では、65歳未満の目標値はBMI値22ですが、65歳以上の場合は筋肉量の維持も大切なため、目標値を22~25とします。また、日本人は欧米人に比べ、体質的に血糖値を下げるインスリンというホルモンを出す力が弱い上に、その働きを妨げる内臓脂肪をためやすいことも分かっています。ですので、BMIだけでなくぽっこりおなかに代表される内臓脂肪にも注意が必要です。

このように患者さんの年齢、体質、体型、希望するライフスタイルによって、治療の目標値は異なります。ご自身に合ったゴールを医師と一緒に設定することで、治療への動機付けや質がより高まると考えています。

HbA1cの目標値は
それぞれ個別に設定
治療目標は年齢、罹病期間、臓器障害、低血糖の危険性、サポート体制などを考慮して個別に設定する。
コントロール目標値注4)
65歳以上の高齢者については「高齢者糖尿病の血糖コントロール目標」を参照
血糖正常化を
目指す際の目標注1)
6.0%未満
合併症予防の
ための目標注2)
7.0%未満
治療強化が
困難な際の目標注3)
8.0%未満
  1. 適切な食事療法や運動療法だけで達成可能な場合、または薬物療法中でも低血糖などの副作用なく達成可能な場合の目標とする。
  2. 合併症予防の観点からHbA1cの目標値を7%未満とする。対応する血糖値としては、空腹時血糖値130mg/dL未満、食後2時間血糖値180mg/dL未満をおおよその目安とする。
  3. 低血糖などの副作用、その他の理由で治療の強化が難しい場合の目標とする。
  4. いずれも成人に対しての目標値であり、また妊娠例は除くものとする。

日本糖尿病学会 編・著:
糖尿病治療ガイド2022-2023,P.34,文光堂,2022

トークセッションTALK SESSION

糖尿病治療、主治医とともに歩むために

トークセッション風景
  • 鈴木先生
    鈴木 亮先生
  • 平井先生
    平井 啓先生
  • 利根川編集長
    利根川 昌紀
    [ヨミドクター編集長]
  • 政井さん
    進行
    政井 マヤさん
    [フリーアナウンサー]
糖尿病治療の悩み「悪化を想像できない」
リアルタイムアンケート Q1
主治医とともに糖尿病治療を歩む上でお悩みのことはありませんか?
【選択肢】
  • ①目標値が分からないし、何に向かって頑張って良いか分からない
  • ②将来的に病気が悪化し、合併症が進行することが想像できない
  • ③医師との対話で先生が考えてくれたことに対して意見することに抵抗がある
  • ここでは、視聴者の皆さまへリアルタイムアンケートを行いながらお話を伺います。まず一つ目の糖尿病治療におけるお悩みについて、「将来的に病気が悪化し、合併症が進行することが想像できない」という回答を選んだ場合です。
  • 糖尿病は症状があまりないので、治療の必要性を実感しにくいのでしょうね。
  • そうですね。ただ、症状がなくても合併症が進行している可能性はあります。いくつかの合併症は、検査で進行が把握でき、初期に分かれば重症化を防ぎやすくなります。眼科検診や尿検査などは定期的に受けると良いでしょう。
  • 症状があれば、つらい症状から解放してくれる治療は「利得」となりますが、症状のない糖尿病の場合、治療を「損失」と感じてしまいがちです。とはいえ、無理に合併症を想像して怖がる必要はなく、定期的な検査の結果を予防のモチベーションにすると良いと思います。
  • 「医師に意見をすることに抵抗がある」についてはいかがですか。
  • 以前とは違い、今は患者さんと医師が一緒に取り組む治療スタイルに変わってきています。診察時間が短くなってしまいがちですが、糖尿病は、医師、看護師、栄養士とチームで治療にあたっています。医師に言いそびれたことは、ぜひ看護師や栄養士に伝えていただけたらと思います。
「やりたいこと」を主治医に伝えてほしい
リアルタイムアンケート Q2
先生から次の言葉をかけられた場合、どちらが治療に対して行動を変えようと思いますか?
【選択肢】
  • ①「治療を受けることで、合併症を防ぎ、将来的に糖尿病のない人と変わらない生活を送ることにつながりますよ」
  • ②「このまま放っておくと、透析治療が必要になったり、脳梗塞になったり、心臓への合併症が発生しますよ」
  • 二つ目のアンケート、「行動を変えようと思う医師の声がけ」の二つの選択肢は、まったく逆ですね。
  • どちらを選ぶかは、いわゆる褒められて育つ人と叱られて育つ人の違いでしょうか。ただ、医療者は医学的な専門知識に基づき、リスクはしっかりと伝えなくてはいけません。この時、同時に患者さん自身が望むゴールを共有し、その要望に沿った助言もできると良いのかなと思います。
  • 鈴木先生のご講演では、治療の指標となる目標値の設定についてお話がありました。これに加えて、「今後、自分はこういう生活をしていきたい」という将来の目標も主治医に伝えておくと良いのでしょうか。
  • その通りです。今後「やりたいこと」あるいは「やりたくないこと」をリスト化しておいて、もし口頭で伝えにくければ、紙に書いて手渡すのも一つかと思います。
  • 患者さんが何に価値を置いているのかを知っていれば、医療者も治療についてより適切な判断ができますし、患者さんへの伝え方ももっと工夫できますね。
  • 血糖や体重などの管理が重要とはいえ、患者さんも治療のために生活しているわけではありません。人生の楽しみについても主治医と共有し、上手にこの病気と付き合っていただけたらと思います。