教員が発信する上智の学び

さまざまな分野の研究、課題解決にデータ・サイエンスが貢献する

林 等
理工学部 情報理工学科 准教授

脚光を浴びる「IoT」とは

林 等 理工学部 情報理工学科 准教授

 「IoT」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。「Internet of Things」の略語で、日本語では「モノのインターネット」などと訳されています。この仕組みのポイントは、あらゆるモノをインターネットに接続し、相互に情報をやりとりさせながら、遠隔にあるモノの状態を把握したり、制御したりできること。身近なところでは、電気やガスのスマートメーター(通信機能を持ちエネルギー使用量などをリアルタイムで把握できる次世代型メーター)で活用され始めています。

 ここにきてIoTが脚光を浴びている背景には、スマートフォンなどのウェアラブル・デバイス(身に付けられる端末)の普及があります。手元で操作できるインターネット端末を多くの人が持つようになり、いつでも、どこでもモノの状態把握や制御が可能になりました。加えて、モノから情報を吸い上げるセンサー等の発達もあり、IoTがより便利で価値のあるものになってきているのです。スマートメーターの例では、エネルギー使用量をリアルタイムで可視化し、ユーザーに意識させることで、10~15%の省エネを達成したという報告もあります。

ビッグデータ時代の情報理工学

 こうして、人ばかりでなく、モノもインターネットにつながり、膨大な情報が流通するなかで、データ・サイエンティストという新たな職業も注目されています。いわゆるビッグデータの分析などを行い、そこから価値のある理論や知見を見出す人たちです。きっとこれからの社会では、こうした人材の重要度が急速に高まっていくでしょう。例えばビジネスの世界でこれまで勘や経験に頼っていた戦略も、大量のデータを統計的に処理することで、より客観的かつ論理的なものとすることができるわけです。

 そのほかにも、医療、生命、都市基盤、環境、さらには宇宙まで、さまざま分野の研究、また課題解決において、今後データ・サイエンスがますます貢献していくに違いありません。なぜなら、いずれの研究においても、大規模なデータベースを構築し、それを解析していくことが、新たな発見をもたらす有効な手段の一つとなっているからです。

いかに多くの引き出しを持つか

 そうした最先端の領域を扱う情報理工学の研究開発活動で何が重要か——。私自身は「いかに自分の中に多くの引き出しを持っておくか」だと思っています。例えばコンピュータは、情報理工学の重要なツールですが、その技術や知識があれば研究ができるかというと、そうではありません。研究を粘り強く続けていくためには、やはり多面的な視点が必要で、ある方法がうまくいかなければ、すぐに別のアプローチを考えることが求められます。そこでは、コンピュータや情報処理以外の知識やノウハウも大いに生きてくるのです。

 そうしたことからも、上智大学の理工学部、また情報理工学科では、理工融合の「複合知」を重要なキーワードの一つとして、教育を行っています。実際、情報工学科にも、情報通信、人間情報、社会情報、数理情報といった幅広い分野の教員陣が揃っていますから、多様な専門知識を結びつけながら、それぞれが自身の興味、関心を追究することができるでしょう。

 初めにお話ししたIoTもそうですが、わずか10年前と比べても、情報工学やITは想像を超える進歩を遂げました。そして今後も、自ら新たなフィールドを切り開いていける人にとってはやりがいのある分野であり続けるでしょう。「我こそは」という気概と主体性を持った学生が来ることを楽しみにしています。

林 等 理工学部 情報理工学科 准教授
林 等(はやし・ひとし)
理工学部 情報理工学科 准教授

もともとの専門領域は携帯電話・スマートフォンなどの無線通信システムだが、大手通信会社の研究企画部門での経験を活かし、安心・安全な社会を実現するセンサネットワークシステムの研究に従事。

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