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- ライノルト・オプヒュルス鹿島 外国語学部 ドイツ語学科 教授
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- ライノルト・オプヒュルス鹿島
- 外国語学部 ドイツ語学科 教授
映画でドイツの社会と文化を知る
日本とドイツの現代文化について、思想、文学から大衆文化まで幅広く研究を行っています。なかでも力を入れているものの一つが、授業でも取り上げている、現代ドイツ映画の研究です。ドイツ映画全般の歴史や特徴はもちろん、個別の作品を詳しく分析することで、ドイツの社会や文化について考えていきます。
トルコ系ドイツ人のファティ・アキン監督が撮った「太陽に恋して」は、私も大好きな作品の一つ。ドイツ人の青年が一目惚れしたトルコ人女性を追ってハンブルグからイスタンブールまで旅をするロードムービーで、若い男女の三角関係にからめて、ドイツ国内に多いトルコ系移民の暮らしぶりや欧州域内の国境のあり方などが描写されています。
東西ドイツの統一と家族愛を描いたヒューマン・コメディー「グッバイ、レーニン!」では、旧東ドイツ製の大衆車であるトラバントと旧西ドイツのブランド車がシンボリックに対比されるような形で登場する。授業では当時の歴史やそうした背景の解説なども行いました。
こうした映画を見ることで、ドイツ語力を鍛えながらドイツの歴史や今の課題を知ることができる。物語の展開や登場人物の行動・考え方にも、多くのことが見て取れると思います。
現地で生のドイツ語に触れる
ドイツ語学科では、実際の生活やビジネスで使われているドイツ語を習得するため、会話、ライティング、読解など幅広い能力をしっかり鍛えていきます。高いレベルの語学力をつけるには、一定期間は集中的に学ぶ必要がありますし、反復練習も不可欠。授業でも、現地の教科書を使いながら、密度の濃いコミュニケーションを目指しています。
可能であれば現地に行き、生のドイツ語に触れるのがやはりベストです。ドイツ語学科では海外で半年間学ぶ「在外履修」が2年生のプログラムに組み込まれており、多くの学生が参加します。交換留学制度も充実していますので、豊富な機会を上手く活用するといいでしょう。
ドイツ語圏の文化や社会について幅広く勉強できるのもドイツ語学科の大きな特徴で、私もドイツの現代文化について講義やゼミを担当しています。内容は学期ごとに変えており、入学試験の面接やオープンキャンパスで高校生と話したときに関心が高かったテーマなどを参考に決めることもあります。ある年には、ドイツの映画や小説などに登場したサッカーについて研究するゼミを開講したりもしました。
欧州で中心的な役割を果たす国
ドイツ語はドイツに限らず、オーストリアやスイスなどでも用いられています。また、ドイツにはカントやヘーゲルの哲学、クラシック音楽をはじめとする豊かな思想や文化の伝統があり、近年は環境分野でも世界をリードしている。そうした分野を深く学ぶ上で、ドイツ語を身につけておくことは非常に有益でしょう。
さらに、ドイツはEUの核の一つとして、政治面・経済面で大きな役割を果たしています。ヨーロッパの歴史を学ぶにも、今後のヨーロッパを考えるにも、ドイツを抜きにはできません。
また、ヨーロッパの言語は基本的な構造が似ていますから、ドイツ語を学ぶと他の言語がより学びやすくなるというメリットもあります。
そして何より重要な点は、自国の文化とは異なる文化を深く学ぶことで、自分のいる社会について、別の視点から見られるようになるということです。ドイツ語学科で新しい言葉と未知の文化に触れ、グローバルな視点を得ることは、今後どのような職業に就く場合でも、大きな力になっていくでしょう。
- ライノルト・オプヒュルス鹿島(らいのると・おぷひゅるすかしま)
- 外国語学部 ドイツ語学科 教授
ディスクール分析、日本文学、ドイツ現代文化、ドイツにおける日本のイメージ、ヨーロッパの映画、日本の映画を研究。「『エコロジー』をめぐって— ディスクール分析ラディカリズム」(共著、2012年)